数ある楽器の中でも、特別なのが『ホルン』。
ホルンは『世界一難しい楽器』と言われ、柔らかくて伸びやかな音色が、とても魅力的な楽器です。
このホルンを吹く人に多い悩みが
『なかなか高音域が出せない』
ということ。
筆者も吹奏楽でホルンをやっていましたが、高音域では苦労しましたね。
でも、高音域を出すコツや練習の仕方も、あるんです!
それも気になるところですよね。
今回の記事では
- ホルンで高音域を出す方法
- ホルンが『世界一難しい』といわれる理由
について、解説します。
ぜひ読んで、ホルンを楽しんでくださいね!
ホルンの高音域(ハイトーン)ってどうすれば出る!?
ホルンの『高音域』ってどの辺りの音?
まず、『高音域』とは、どのくらいの高さの音のことなのかを、チェックしておきましょう。
『高音域』は、ホルンの楽譜で、五線の上のソくらいから上の音のことを指します。
この五線の上のドの音は、運指上ではホルンの最高音です。
でも実際には、もっと上の音も出せるんですよ。
ちなみに、ホルンの音域はこのくらい。
これも運指上なので、実際にはもう少し広く、4オクターブくらいあります。
ホルンの高音域の出し方とは
では、ホルンの高音域の出し方を解説しましょう。
ホルンで高音域を出すには、
- 高音域に対してネガティブなイメージではなく、音楽的なイメージを持つ
- アパチュアと口の中の広さを調節する
- 息のスピードと量、圧力を調節する
ということが大切です。
ネガティブなイメージではなく『音楽的なイメージ』を持とう
高音域に対して
- 高い音は出すのが難しい
- こんな高い音、自分には出せないんじゃないか
- 『高い音』は、出したい音を下から見上げている感じ
といった、ネガティブなイメージを抱いてしまうことは、よくあります。
まず、
こういったネガティブなイメージを、『音楽的なイメージ』に取り換えましょう!
『どういう音を出したいか』を、なるべく具体的にイメージするのです。
たとえば
- 優しくて力強い、芯のある音
- 雲間から光が差してくる感じ
- 嬉しいことがあって、とても幸せな気持ちになった時の感じ
といったイメージです。
憧れのホルン奏者がいるなら、『ホルン奏者の○○さんが出している音』を具体的に思い浮かべるのも良いですね。
なぜイメージが大事かというと、体はイメージに振り回されるからです。
ネガティブなイメージがあると、体が硬くなり息も使いにくくなるので、音を出しにくくなります。
逆に、ポジティブなイメージや出したい音の具体的なイメージを持ってそれに集中すれば、体はその方向に動きやすくなるのです。
アパチュアと口の中の広さを調節する
『ホルンで高音を出すのは、ホースの先をつぶして水を遠くに飛ばすのと同じ仕組み』とよく言われます。
この『ホースの先の水の出口を指で調節する』のが、
『アパチュア(唇から息を出す穴の大きさ)と口の中の広さを調節する』ことです。
高音では、
- アパチュアを小さくする
- 口の中を狭くする
これが基本です。
この状態で吹こうとすると、自然と息のスピードや圧力も上がります。
メモ
『口の中を狭くする』ときは、『イ』や『エ』の発音をイメージすると、狭くしやすいです。
息のスピードと量
アパチュアと口の中を小さくすると、自然と息のスピードは上がりますが、
- 息のスピードを上げる
- 息の量を多くする(という意識で吹く)
ということを、意識的にするのも必要です。
そうすると、息の圧力も上がり、高い音を出しやすくなります。
メモ
息のスピードを上げ、息の量を多くするときは、
『遠くのろうそくを吹き消す』
というイメージをするのも良いですよ。
『プレスしちゃダメ』って本当?
そういう話、ありますよね。
(プレスとは、マウスピースを唇に押し付けることです。)
でも実際には、
プロのホルン奏者も、ある程度はプレスして吹いているんです。
ですから、『プレスしてはいけない』というわけではありません。
もちろん、やみくもに押し付ければ良いわけでもありません。
音をよく聴きながら、イメージ通りの音になるプレスの加減を研究してくださいね。
メモ
プレスをすることを、『押し付ける』ではなく、『マウスピース、唇、歯を【密着させる】』というイメージでやっている人もいます。
そういう風に、自分にとってやりやすいイメージを見つけるのも良いですよ!
高音域を出すためのおすすめの練習方法
高音域の練習方法を、いくつか紹介しましょう。
練習方法は、人によって合う方法が違うこともよくあります。
やってみながら、自分にちょうど良い練習の仕方を探してくださいね。
ここで紹介する方法をヒントにして自分で開発するのも、おすすめですよ!
リップスラーと音階
『高音を出せるようになるのには、リップスラーや音階の練習をすると良い』
って、よく言われますよね。
これは、実際そうです。
リップスラーや音階を奏でるには
- アパチュアの大きさ
- 口の中の広さ
- 息を吐く量や力
を、なめらかに変える必要があります。
なので、リップスラーや音階がうまくなると、アパチュアや口の中の広さ、息の調節がうまくなり、高音域を出すのに役に立つのです。
リップスラーや音階の練習をする時には、
- 口の中の変化
- アパチュアの変化
- 息のスピードや吹く力の変化
に注意を向けて、低い音から高い音へ、高い音から低い音へと、ゆっくり丁寧に練習してくださいね。
管の長さを利用した練習
ホルンには、4つ(シングルホルンは3つ)のキーがありますよね。
このキーは、息が通る管の長さを調節する役割をしています。
この『管の長さを変えられる』という特性を生かして、『高い音を出しやすい指使い』で高音の練習をしてみましょう。
この指使いで出せるようになると、
- 『高音を出せる』という意識を持つことができる
- 高音を出す感覚をつかめる
ということから、他の指使いでも出しやすくなります。
実際に曲を吹くときには、調やハーモニーによって、他の指使いをすることもあります。
でも、練習として、この指使いでやってみると良いですよ。
『出ない音』の1つ下の音を練習する
『高くて出せない音の、1つ下の音をきれいに出せるようにする』
というのも、良い練習になります。
たとえば、
『五線の上のラの音は出なくて、その下のソの音はかすれたりつぶれたりする』
というなら、ひとまず、ソの音をきれいに出せるように練習しましょう。
そうすると、ラの音を出しやすくなります。
ラの音がなんとか出るようになったら、今度はラの音をきれいに出す練習をするのです。
そうやって、1つ1つ進めていくと良いですよ。
音を『フレーズ』としてとらえる
1つの音だけを出すときや音階、リップスラーの練習の時も、
- 『音を出す』というより『音楽を奏でる』という意識で吹く
- 『フレーズ』として、音楽的なイメージで吹く
ということが大切です。
そのほうが吹きやすいですし、音も出やすいんですよ。
これは、最初に書いた『音楽的なイメージを持つ』ということと同じです。
良い音で吹くためにすべての音域で大切なことなので、ぜひ普段から意識してくださいね。
がんばりすぎは禁物!
高い音を出せるようになりたいからと言って、がんばりすぎるのはやめておきましょう。
あまりがんばりすぎたり必死になったりすると、体にも気持ちにも余分な力が入って、逆に音が出にくくなります。
むしろ、数分でもいいので毎日少しずつ練習するようにして、
- 疲れたら休んだり、他の練習をしたりする
- 昨日出せた音が今日出せなくても焦らず、『そういうこともある』くらいに思っておく
としたほうが良いですよ。
高音域を出すとバテやすい場合は
そういうこと、ありますよね。
バテやすいのは、どこかに余分な力が入っているからです。
そういう時は、漠然と『力を抜こうとする』よりも、
- 息のスピードや吹く力が変わらず、アパチュアや口の狭さだけに頼って吹こうとしていないか
- 逆にアパチュアや口の狭さを変えずに、息のスピードや吹く力だけに頼っていないか
- アパチュアや息を変えているつもりでも実際には変わっておらず、首や体に力が入っているだけになっていないか
といったことを、自分をよく観察して点検してみてください。
そうすると、どこを改善すると良いか、見えてきやすいですよ。
唇の厚さや歯並びは高音域に影響する?
筆者も、『唇が厚いと低音向け、薄いと高音向け』という話を聞いたことはあります。
でも、唇の厚さは、あまり関係ありません。
要は、アパチュアと息のコントロールですから。
歯並びに関しても、多くの場合はあまり影響しないと考えて大丈夫です。
歯並びの状況で吹きにくい場合は、マウスピースを当てる場所を少しずらすなど、工夫してみてください。
(あまりずらしすぎると吹きにくくなるので、注意が必要です。)
ただ、
- 歯並びがかなりでこぼこで、マウスピースをうまく当てられない
- 歯と歯の隙間が大きくて、息が漏れてしまう
- 吹く時に、唇に歯が当たって痛い
- 血が出てしまう
といった場合は、歯医者に相談しましょう。
ホルンが『世界一難しい金管楽器』といわれる理由
ホルンは、『世界一難しい金管楽器』として、ギネスブックにも載っています。
なぜホルンはそんなに難しいのでしょうか?
ここからは、その理由について、解説します。
ホルンが『難しい』と言われる理由
ホルンが『難しい』と言われるのには
- 音域が広い
- 音が当たりにくい
- 音のコントロールが難しい
- 右手の加減でも音が変わってしまう
といった理由があります。
とにかく音域が広い
先にも触れましたが、ホルンは本当に音域が広い楽器です。
約4オクターブの音域は、チューバの音域からトランペットの音域までかかっています。
つまり、ホルンは低音から高音まで吹けることを要求される楽器なのです。
とはいっても、人それぞれ得意な音域もありますし、ホルン吹き全員がすべての音域を吹けるわけでもありません。
実際の演奏では、
- 高い音域を吹く『上(うえ)吹き』
- 低い音域を吹く『下(した)吹き』
と、ホルンパートの中で役割分担することも、よくあります。
『全音域を吹けなければオーケストラや吹奏楽に参加できない』なんてことはないので、心配しないでください。
音のコントロールが難しく、音が当たりにくい
『ホルンは音が当たりにくい』ということも、よく言われます。
これもホルンの難しさの1つです。
ホルンは倍音が多いので、1つの指使いでたくさんの音を出せます。
たとえば、B♭管の開放だと、こんなにいくつもの音が出せるんです。
どの音を出すかは、息と唇でコントロールしますよね。
低い音はまだ良いとして、高いほうの音だと、ちょっと間違えると隣の音が出てしまいます。
そのうえマウスピースが小さいので、口や息のコントロールが難しいのです。
これが、『ホルンは音が当たりにくい』と言われる理由です。
右手の加減でも音が変わる
ホルンを吹く時は、右手をベルの中に突っ込んでいますよね。
この右手、一見ただ入れているだけに見えて、意外と重要。
右手の入れ方で、音色が変わるからです。
右手の角度によって微妙に音色が変わるだけでなく、入れ方によってはがらりと音色が変わります。
音程を変えることも、できるんですよ。
『右手の入れ方が音に関わる』という点では、右手の使い方も難しいのです。
ホルンの役割の多様さ
『ホルンには役割が多い』ということも、ホルンが難しいといわれる理由の1つです。
ホルンは、オーケストラや吹奏楽の要となる楽器。
- 朗々とメロディーを奏でる
- 高らかにファンファーレを鳴らす
- 木管楽器や弦楽器と一緒に柔らかなハーモニーを吹く
- マーチの裏打ちをする
など、いろいろな役割を務めます。
また、柔らかで繊細な音から力強い音まで出せるので、金管楽器と木管楽器の橋渡し役でもあります。
つまり、ホルンはいろいろな音色や表現力が要求されるのです。
メモ
『木管五重奏』という編成の合奏にも、ホルンが入っています。
ホルンは金管楽器なのに、不思議ですよね。
これは昔、ホルンが民衆に親しまれ、木管楽器と一緒に合奏することが多かったことからです。
『木管楽器』『金管楽器』と区別することがなかった時代にできた編成を、のちに『木管五重奏』と呼ぶようになりました。
つまり、『ホルンが特別だから、木管楽器の合奏に入れられた』ということではないのです。
ホルンは本当に難しい?
ここまで見てきたように、ホルンは『難しい』と言われますし、そう思われがちです。
でも実際にやっていた筆者としては、
『それぞれの楽器にそれぞれの難しさがあるのと同じくらいの難しさ』
と感じています。
初めは難しいかもしれません。
でも、吹けるようになってしまえば、なんてことはありません。
小学生でもホルンを吹いていますし、大人になって始めて楽しんでいる人もいます。
そして、どんな楽器でも、極めようと思えば難しいもの。
これは、どんな楽器でも同じですよね。
ホルンと相性が合って楽しければ、『ホルンの難しさ』なんて気にならなくなります。
ですから、『難しいかどうか』なんて気にしなくてOKです!
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まとめ
ホルンの高音域を出すには
- 出したい音に対して、音楽的で具体的なイメージを持つ
- アパチュアと口の中を狭くする
- 息のスピードを速くし、息の圧力も高める
ということが基本。
練習方法としては、
- リップスラーや音階を丁寧に練習して、アパチュアや息のコントロールの感覚をつかむ
- 高音を出しやすい指使いを使って練習する
- 『出ない音』の1つ下の音をきれいに出せるように練習する
といった練習方法があります。
どんな練習をする時も、音に対して音楽的なイメージを持って吹くようにしましょう。
ホルンは、音域が広く、音のコントロールが難しいです。
また、オーケストラや吹奏楽の中でも幅広い役割を担っていて、『オーケストラの心臓』とも言われるくらいです。
そのため、ギネスブックでも『世界一難しい金管楽器』と言われています。
でも、ホルンは音色も表現の幅もとても広く、奥が深い楽器です。
難しさなんて気にせずに、ホルンの楽しさにどっぷり浸かってくださいね!