庵野秀明さんが総監督を務めた、NHKのアニメ『ふしぎの海のナディア』。
1990年4月13日から1991年4月12日にかけて放送されました。
この作品は、1990年のNHKアニメとしては、
非常に評価の高い作品
と言われていますが、唯一と言っていい欠点があります。
その残念なポイントが、
『島編』と呼ばれる部分の評価が非常に悪い
ということです。
なぜ、『ふしぎの海のナディア』は島編が酷評されているのでしょうか?
当記事で、『ふしぎの海のナディア』の島編の評価が低い理由についてお話していきます。
『ふしぎの海のナディア』の中でも評価が悪い島編
『ふしぎの海のナディア』は、全部で39話が放送されました。
90年代のNHKアニメの名作として、今もなお語り継がれ、2018年には『スーパーロボット大戦X』に参戦するなど、いまだ人気の衰えぬ作品ですね。
『スパロボ』から知って、『エヴァ』や『シンゴジラ』ファンが、庵野秀明さんが総監督の作品と知ってなど、様々な理由から『ふしぎの海のナディア』を観ようと思うかもしれません。
しかし、『ふしぎの海のナディア』を観ようと思うのなら、1つだけ注意しなければいけないことがあります。
それが、
島編、アフリカ編と呼ばれるエピソード群の評価が非常に悪い
ということです。
島編やアフリカ編というのは、あくまで俗称であり、正式に名付けられているわけではありません。
それぞれを紹介すると、『ふしぎの海のナディア』の島編は、
23話~30話までのエピソード群
で、ジャンとナディアが漂流して流れ着いた島でのストーリーのことを指します。
一方のアフリカ編は、
32話~34話までのエピソード群
のことを指し、島から脱出してから、ナディアの生まれ故郷に辿り着くまでの内容です。
この島編・アフリカ編で脱落した視聴者は、結構いたのではないでしょうか。
それくらい、全てにおいて酷かったのです。
『ふしぎの海のナディア』の島編・アフリカ編の評価が悪い理由
『ふしぎの海のナディア』島編・アフリカ編の評価がなぜ低いかというと…
その理由は、大きく2つあります。
- 作画崩壊と言われる極めて低い作画の質
- 内容も中身がなく、前後の脈絡を吹っ飛ばす超展開
この2つが、致命的なまでに崩壊していたため、評価がひどく悪いのです。
まずは、1つ目の作画崩壊について紹介します。
『ふしぎの海のナディア』島編に突入するまでの作画はクオリティが高かったのですが、島編に入ってみれば、
こんなものや…
こんなひどい作画が連発!
この崩壊した作画のまま、合計で10話ほど進んでいったのです。
流し見でも明らかに、
「ん?」
と違和感を覚えるような酷い作画まであり、アニメの作画崩壊史においては、『超時空要塞マクロス』『機動戦士ガンダム』と並び、
作画崩壊史初期に分類される代表的作品
になってしまいました。
(伝説の『ヤシガニ』や『ガンドレス』が登場するのは、もう少し後になります。)
なぜ、それまで順調だった作画が、いきなり島編になってこのような崩壊を起こしてしまったのか?
それには、
低質な韓国のアニメ制作会社『世映動画』に外注していた
という理由がありました。
なぜ韓国の会社に外注したのか、その理由は定かではなく、当時のガイナックス社長の発言などをまとめると、
NHKが作画を丸投げした
ということになります。
この時代の韓国の作画が低質なことは、『ふしぎの海のナディア』より前に放送された『超時空要塞マクロス』が韓国企業へ外注した時に証明済み。
その結果、
あまりにひどい、崩壊しまくった作画が送られてきたのです。
これにはスタッフも茫然となり、
総監督の庵野秀明さんは激怒し、泣きながらロッカーを殴りまくった
という伝説が残っています。
とくに崩壊していた34話の作画は、
庵野秀明さんが自腹を切って、スタッフを集めて作り直した
ため、MV風の内容になっているのも伝説の1つですね。
次は、2番目のストーリーの超展開です。
『ふしぎの海のナディア』は、島編に入るまで登場人物の命に関わるシリアスな内容も多かったのですが…
島編になると、いきなり
ギャグ多めのコミカル路線
になっていきます。
その内容も、とてもつまらないと評判で、
- 世界観を逸脱したキングの行動
- 無駄に長い夢オチ
- ヤケクソになって作ったのか?と思うほど支離滅裂な脚本
など…
一言、『中だるみ』という言葉で済ますには、強烈過ぎる、視聴するに堪えない内容が多かったのです。
あまりに中身がないため、
島編はジャンとナディアの関係が深まっただけのパート
と言われるくらいです。
しかし、2人の関係が深まるのは重要な要素ですから、島編がなくても良いかと言われると、そうではないのが難しいところ…。
その後、ナディアはアフリカ編で、いきなりイケメンに一目惚れしていましたが…。
このように、『ふしぎの海のナディア』の島編・アフリカ編の評価が悪い理由は、
- 作画崩壊
- 前後のシリアスをぶち壊すめちゃくちゃな脚本
この2つに詰まっていました。
ただし、ラスト4話の、『ノーチラス号編』と俗称されるエピソード群になると、『ふしぎの海のナディア』の評価は一転します。
作画は、崩壊前の力の入ったクオリティに戻り、ストーリーも熱い演出が高評価を得たのです。
結果、『ふしぎの海のナディア』は、
『終わりよければすべて良し!』
といえる評価で、名作となりました。
なぜ、ラスト4話になって、いきなり作画やストーリー展開が生き返ったかというと、
制作スケジュールが、かなり遅延していたため、あえて中盤の作画を捨て、ラスト4話に全力を尽くすことでクオリティを高めていた
ということが後に判明しています。
実は、『ふしぎの海のナディア』の制作は、常に作業が遅延していて、
放送ができない危機に瀕していた
のです。
当時、湾岸戦争の影響で、1か月放送が休止されたのですが、
放送休止期間が、現場にとっては救いの手となり、打ち切りにならずに最後まで放送できたのです。
湾岸戦争のおかげで『ふしぎの海のナディア』は完結できた
と言っても過言ではないのです。
そんな状況ですから、もし島編・アフリカ編の全てのエピソードで修正を行っていたら、『ふしぎの海のナディア』は打ち切りになっていたかもしれませんね…。
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まとめ
NHKで放送された、庵野秀明さんが総監督を務めた作品『ふしぎの海のナディア』は、
序盤と終盤は評価が高いが、中盤の島編・アフリカ編と呼ばれる部分は評価が悪い
という、
中だるみが酷かった作品
と言えます。
島編・アフリカ編がこのようになってしまった原因は、
- 韓国企業に外注したため起こった作画崩壊
- スケジュール遅延から中盤を捨てたため、脚本もめちゃくちゃ
という2つの理由にあります。
それらが改善された終盤に、クオリティが元に戻ったのです。
1話だけ強烈な作画崩壊を起こしてしまうアニメは数多くありますが、
10話近く崩壊し続けた作品
なんて、なかなかありません。
これだけ話題になると、怖いもの見たさで『ふしぎの海のナディア』を見たい人もいるかもしれませんね。