『一国二制度』という言葉を知っていますか?
簡単に言うと、
『1つの国で、2つの制度を持とう』
という考え方のことを指しています。
この言葉を、沖縄県知事の玉城デニーさんが発言したとして物議を醸しています。
もともと、中国がイギリスの植民地だった香港の返還を受けて、
『50年間は社会主義ではなく、資本主義』
を行うことを、認めたことからきている言葉でもあります。
この記事では、玉城デニーさんから出た『一国二制度』の意味、そのメリットと問題点は何なのかを紹介していきます。
一国二制度について理解を深めてみてください。
一国二制度とは
それでは改めて、
一国二制度
について紹介していきたいと思います。
この制度は、
『同じ国の中で別々の制度を敷き、まったく別の方針で国の運営をしていく』
というものです。
本来、国の制度は統一されているのが基本であり、地域ごとに細かい決まりはあっても、統一した目標が必要になるのです。
戦国時代などをベースに考えてもらえば、分かりやすいかもしれません。
戦国時代は、幕府が武士をまとめる立場にあったとはいえ、それぞれの地域が国を名乗って全く別の政策を行っていました。
日本全体での統一した政策が、希薄だった時代ですね。
ですが、それではいつまでも国が乱れるため、江戸幕府により統一した国家運営が行われ始めたのです。
今回、玉城デニーさんが発言した、
『沖縄の関税や消費税をゼロにするくらいの提案があってもよい』
というものですが、これは自由競争を掲げる資本主義の中でも、沖縄の発展のため、
『全く別の新たな資本主義をさせてほしい』
という意味にも取れます。
あくまで筆者の感じたことですが、この全く別の資本主義という部分が、『一国二制度』と呼べるものになるでしょう。
一言で表すと、『国の中に別の国がある』ということです。
一国二制度のメリット
一国二制度のメリットとして考えられるのは、
国の路線とは外れた独自の政策
を行うことができる点でしょう。
どこまでの自由を認めるかによりますが、国によって定められた政策ではなく、その地域独自で自由な活動ができるようになります。
なので、もし他の国との外交を認めている場合は、
『わざわざ、国に断りをいれなくても勝手にできる』
ということにもなります。
ですが、完全に独立しているわけではないので、何か問題を起こしても責任は国全体で背負うことになるため、精神的負担もないでしょう。
まさに良いとこ取りの、好き放題というわけですね。
一国二制度の問題点
ぱっと見ると、良いことだらけの制度に見えるのですが、もちろん問題点はあります。
いくつか挙げていくので、参考にしてみてください。
村八分のような状態になる
ある特定の地域だけ、このような特権を許してしまうと、
他の地域が黙っているわけがありません。
ほぼ必ず、
『うちも同じようにしてほしい』
と、要請が殺到するはずです。
日本にある都道府県は、どこも大なり小なり問題を抱えているのです。
そこに、一部の地域だけ特権を与えてしまうと、今までは『他も同じようなもの』と思って保たれていた均衡が一気に崩れるでしょう。
これは少し考えてみればわかることですが、
『誰かが得をしているなら、自分も同じ扱いをしてほしい』
と思うのは、当然のことだと思いませんか?
なので、もし国が同じような特権を他の地域にも認めなければ、特権を持った地域はまるで村八分のようになってしまうでしょう。
少数より多数が勝つのは、古くからの世界の法則です。
例外も多少ありますが、よっぽど納得できる判断材料がなければ、いずれ孤立していくのは明白です。
他の国に懐柔される
外交が認められ、自由にできるようになった場合、その地域はすでに『国』といっても過言ではありません。
そして
弱い国は、強い国に飲み込まれていく
のも、世の常なのです。
必ずといってよいほど、他の国から懐柔されていくことはもちろん、自国からも援助されないことだって考えられます。
自由を得るということは、それだけ責任も重くなるということでもあり、あくまで、
『自分の責任は自分で取る』
ということなのです。
全く別の制度を敷いたとはいえ、領土を易々と渡すわけにもいかないので、援助はあるかもしれません。
それでも、自分が関与していないことに対して、どれだけの援助が出来るかといわれれば、あまり期待はできないでしょう。
『一国二制度』はそれだけリスクの高い制度でもあるのです。
そもそも運営できない可能性もある
仮に、一国二制度が認められたとして、その地域だけの政策が始まるとしましょう。
ですが、制度を分けた、もう一方からの援助は期待できないでしょう。
もし、国が積極的に一国二制度を導入するのであれば話は別ですが、制度を分けること自体、力を分散するだけでメリットはあまりないです。
国を運営するなら、統一した制度の方が管理しやすく、現に、現在の日本はそれで平和を保っているのです。
もし、特権を持った別の制度が始まるなら、周囲からの批判を受けることは明白であり、先程挙げた他の国からの懐柔も考えられます。
この状態で、正常な運営ができるとは、普通に考えても無理だと誰もが思うでしょう。
一国二制度を成功させるには、周囲の納得と援助が絶対に必要なのです。
スポンサーリンク
まとめ
今回のまとめとしては、
『よっぽど周囲が納得するか、多大なメリットがない限り、一国二制度は成り立たない』
ということがいえるでしょう。
そもそも国で制度を分けるくらいなら、
『独立したほうがまだマシ』
というものです。
独立して、自分たちの責任のもと、新たに制度を作っていくならまだしも、
特権だけもらって名前は国を使うなどは、誰も認めないでしょう。
国の規模で話していますが、これは一般的にどんな団体でも当てはまることです。
制度を作るときには、
感情論を語るだけでは成り立ちません。
相手が納得するだけの理由、それに見合ったメリット
があって始めて制度は作られていきます。
玉城デニーさんは、
「一国二制度は比喩だった」
としていますが、世間的にはあまり良く見られないでしょう。
これを他人事と捉えず、
公の発言には責任が伴うこと
を肝に銘じて、日々の生活を送っていきましょう。