言葉の表現に
『前倒し』
があることは、よく知られています。
でも、その対義語は知っていますか?
よく使われている表現としては『先送り』『後回し』などですね。
そこに最近、新しい対義語が生まれています。
それは『後ろ倒し』という言葉です。
この後ろ倒しは、新聞などではよく使われていますが、一般的にはまだ馴染みのない言葉です。
この記事では、その『後ろ倒し』について解説していきます。
新しい言葉は、使いどころなどに気をつけなければ、変な目で見られることもあります。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
そもそも前倒しの意味とは?
後ろ倒しを紹介する前に、改めて『前倒し』の意味を説明しておきます。
一般的に知られている意味としては、
- 予定を早める
- 先に行う
- 前に倒すこと
などがあります。
日常でもよく使われることがある言葉なので、一般的にも馴染み深いものとなっています。
後ろ倒しの意味は?
それでは本題である『後ろ倒し』について紹介していきます。
後ろ倒しは、前倒しの反対・対義語として使われていて、意味としては、
- 予定を遅らせる
- 後で行う
- 後ろに倒すこと
などがあります。
後ろ倒しの使い方・例文
それでは、どのようなときに『後ろ倒し』という言葉を使うのでしょうか?
例文をいくつか紹介すると、
- 午後の会議を後ろ倒しにする。
- 就職活動の解禁時期が後ろ倒しになった。
- 納期を後ろ倒しにする。
- 結果発表を後ろ倒しにする。
- 事業費の請求を後ろ倒ししなければならない
というふうに使うことができます。
後ろ倒しは、いつ頃から使われ始めた?
『後ろ倒し』という言葉は、いつ頃から使われ始めたのでしょうか?
普通、この言葉の意味で使うといえば、
『先送り』や『延期』
などの方が一般的と言えるでしょう。
ですが、後ろ倒しという言葉自体は、かなり前から使われていました。
1980年代などには、すでに見られていたんです。
ですが、注目されはじめたのは比較的最近の出来事で、就職活動の先送りを『後ろ倒し』と表現したことで、広く認知されていくことになります。
後ろ倒しは官庁俗語で使われている
前倒し・後ろ倒しという言葉は、ともに『倒す』という言葉が使われています。
この『倒す』という言葉は、
主に官庁に勤める人が好んで使うもの
と言われていて、度々見られる言葉になっているのです。
安倍首相なども使っている場面があるなど、官庁に勤める人にとっては、それほど珍しい言葉ではないのかもしれませんね。
後ろ倒し同様、前倒しも以前は珍しい言葉だった
今でこそ前倒しは、一般的に使われる言葉になっていますが、以前は全く使われていませんでした。
以前は、
『繰り上げ』
などが、主流として使われていましたが、いつからか前倒しが使われ始めたようです。
『前倒し』という表現は、
『早く先に進む』というイメージが繰り上げよりも強かったこと
から、次第に世間で好まれるようになったともいわれています。
現在では、繰り上げよりも高い頻度で使われている前倒しも、馴染みのない時期があったのですね。
それを考えると、後ろ倒しという言葉も、同じような歴史を辿る可能性は大いにあります。
反対・対義語としても『前倒し』と『後ろ倒し』は語呂が良いので、
セットで覚えやすい
という利点もあるといえるでしょう。
後ろ倒しは全ての辞書に載っているわけではない
少しずつ知名度を上げつつある『後ろ倒し』。
ですが、
すべての辞書に載っているわけではありません。
この言葉を載せている辞書としては
『デジタル大辞泉』
『goo辞書』
『Weblio辞書』
など。
ネット辞書などには載っていますが、少し古い辞書などには載っていません。
また後ろ倒しが、
適切な表現なのかどうか
についても意見が分かれているみたいです。
官庁俗語では使ってよいかもしれませんが、日常生活や報道関係などで使ってもよいかどうかは、判断しかねる時があるということです。
確かにニュースなどは情報の意味を正しく伝えなければいけません。
なので、
あまり浸透していない言葉を使うのには抵抗がある
というのは納得できますね。
ですが、これも先程紹介した前倒しの歴史と同じです。
一度使われ始めると、周囲がその流れに乗って使われるようになるでしょう。
最初の流れを作れるかどうか
が『後ろ倒し』がメジャーな言葉になるかどうかの分かれ道といえるかもしれません。
現時点で『後ろ倒し』を使える場面は限られている
使われる頻度は上がっているとはいえ、まだまだ後ろ倒しを使える場面は限られているといえます。
普段の生活でも、
「すいません、食事の時間が後ろ倒しになりそうです。」
といわれてもあまりピンと来ませんよね?
それなら、
「すいません、食事の時間が遅くなりそうです。」
のほうが、よほど耳に馴染みやすいです。
ビジネスの場面でも、
「この計画は後ろ倒しになります。」
というよりも、
「この計画は先送りになります。」
のほうが、やはり耳に馴染むでしょう。
相手に理解されづらい言葉を使うと、そのたびに説明を入れなければならず、
テンポよく会話を繋げることができません。
『後ろ倒し』を使うにしても、
すでに意味を理解している人だけ
にするか、
もう少し世間の認知度が上がってから
にしたほうが無難でしょう。
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まとめ
今回のまとめとしては、
『新しい言葉は認知されるまでに時間がかかる』
ということが言えます。
今回紹介した『後ろ倒し』以外にも新語と呼ばれる言葉は数多く誕生しています。
ですがあまり認知されていないものも多く、一部の場面だけで使われていることはよくあるのです。
こうした新語を使う場合はその認知度を考えて、仕事の場面でも使えるのか、親しい間柄の人にだけ使うのかを分けておきましょう。
どんな言葉を使うのも自由ですが使い時をわきまえれば、今回の後ろ倒しも徐々に認知度が広がっていくのではないでしょうか?