利き手は幼い頃に判明します。
たいていの人が右利きですが、まれに左利きの人もいます。
『周囲と違う』という理由で、左利きは周囲の大人から忌み嫌われていた時代もありました。
強制的に右手を使うように、親や親族に訓練された人もいるかもしれませんね。
そんな時代に、左利きの人を揶揄する言葉として
『ぎっちょ』
という言葉があります。
左利きの人にとっては、あまりいい気分のしない言葉かもしれません。
しかしこの『ぎっちょ』という言葉にも、由来や語源などが複数あるのです。
今回は、この『ぎっちょ』という言葉について紹介します。
『ぎっちょ』とは?
最近では、この言葉を聞くことも少なくなったのではないかと思います。
ただ高齢の人の中には、まだ使う人もいるかもしれません。
なんとなく聞いたことがある程度で、意味までしっかり分からない人も多いのではないでしょうか。
辞書には、
『(左)ぎっちょ』は『ひだりぎっちょう』の約。(『新明解語源辞典』、『語源海』)
と載っています。
『ぎっちょ』とは『左利き』のことです。
左利きのことを馬鹿にした言葉というよりも、
左利きそのものを指した言葉
のようですね。
『ぎっちょ』の語源・由来をチェック!
聞き慣れない言葉ですが、『ぎっちょ』の語源や由来はなんでしょうか。
左器用(ひだりきよう)説
左を器用に使えることから、左利きの人を『左器用(ひだりきよう)』と呼ばれていました。
それが、“左”がとれて、“器用” だけが残り、その“器用”がなまり『ぎっちょ』となった説です。
最初は、ただの左利きを表す言葉だったようですが、いつの間にか偏見の意味を込めた言葉に変わったようです。
左義長(さぎちょう)説
左義長とは、正月に行われる火まつりの行事のことです。
九州や関西などでは、『どんど焼き』、鹿児島では『鬼火焚き』と呼ぶところもあるそうです。
その年に使った門松や注連飾りなどを燃やして、その年に迎えた歳神を炎ともに見送る意味があるといわれています。
その炎で焼いた餅を食べると、その年は無病息災で過ごせるとも言われています。
また、その年の書き初めを一緒に燃やし、その炎が大きく燃え上がると、字が上達するともいわれています。
この左義長が訛って『ぎっちょ』になったという説があります。
毬杖(ぎっちょう)説
もともとは平安時代に、正月15日に宮中で陰陽師が行っていた行事の中に、この『毬杖(ぎっちょう)』を使うものがあったそうです。
毬杖(ぎっちょう)とは、木の杖(つえ)を彩色の糸で飾った槌(つち)のことです。
この毬杖(ぎっちょう)を振るい、木製の毬(まり)を相手陣に打ち込む平安時代の童子の遊びがあり、これも毬杖(ぎっちょう)とよばれます。
陰陽師が行う行事では、清涼殿の東庭で青竹を束ねて立て、この毬杖(ぎっちょう)三本を結び、その上に扇子や短冊などを添えます。
陰陽師が、謡いはやしながら、これを焼くことで、その年の吉凶などを占っていました。
この行事の中で、毬杖(ぎっちょう)三本を結ぶことから、三毬杖(さぎちょう)と呼ばれるようになりました。
これが民間に伝わり、左義長になったという説があります。
そしてこの毬杖(ぎっちょう)を左利きの人が持ったことから、『左毬杖(ひだりぎっちょう)』となり、『ぎっちょ』に繋がったという説があります。
不器用(ぶきよう→ぶきっちょ)説
左利きの人に対して
「左利きは不器用だから、右が使えない」
という価値観があるため、左利きの人を不器用と呼んでいたようです。
その不器用が『ぶきっちょ』に転じ、それが訛って『ぎっちょ』となったという説があるそうです。
『ぎっちょ』は差別用語?方言?
『ぎっちょ』という言葉は、現在では使う人が少なくなりました。
『ぎっちょ』は差別用語
という理由から放送禁止用語にもなっています。
その理由は、人の身体的特徴を揶揄するものであるからです。
とくに子供は、そのような言葉を覚えて、面白がって使う傾向があるため、そうならないためにテレビでは使わないようにしているようです。
言葉の意味や語源、由来的には『ぎっちょ』という言葉そのものには、差別的な意味があると決めることはできません。
地域によっては、方言として『ぎっちょ』を普通に使っているところもあります。
また高齢者の人の中には、今もこの言葉を使う人は多くいるようです。
使っている人は、それが差別用語などとは思っていませんし、その言葉を受けた人も何も感じていない場合があります。
しかし言葉はその意味よりも、その言葉を使う人の雰囲気や文脈によるものが大きいのです。
多くの左利きの人にとっては『ぎっちょ』という言葉は、差別的な意味を含むものとして聞こえるようです。
言葉を受け取った本人が嫌な思いをするのであれば、それは差別用語になりえます。
相手のことを考えて言葉を使うようにしましょうね!
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さいごに
現代では、左利きも個性として捉える傾向が強くなっています。
昔にように左利きの人を差別したり、無理に矯正させようとすることも少なくなってきました。
それでも今だに、左利きを良しとしない人もいます。
またよくわからずに『ぎっちょ』という言葉を使う人がいるかもしれません。
言葉の意味をしっかり知り、よくわからないまま言葉を使わないようにしてください。