陶器の修理方法としても用いられ、日本の伝統工芸の一つとしても知られる金継ぎ。
単純な修理の方法というより、日本の雅の世界を盛り込んだ文化・伝統として、永きに渡って受け継がれている修理方法と言えるでしょう。
それにしても、ひび割れた陶器が見事に、この金継ぎで蘇る姿を見ると、日本文化だから醸し出される美学・哲学を感じさせられますね。
さて、そんな金継ぎですが、具体的にはどのように修理していくものなのでしょうか。
また、金継ぎを行う意味・考え方、それに対する海外の反応も気になります。
そこで、本記事で金継ぎとはどういうものなのか、簡単な修理の仕方や、考え方、海外の反応を探りながらまとめていきます。
金継ぎとは陶器の美的修理法の一つ?
みなさんは、金継ぎという陶器の修理方法を知っていますか?
現代社会において、
物あるものはいずれ壊れるもの…
という考え方も一部で定着していますが、
昔は、
ものには魂が宿っている
という教えが迷信・言い伝えなどで語り継がれ、その精神は、日本の伝統文化などでも色濃く受け継がれています。
そのためか、修理して何十年も愛用する道具があるのも、決して珍しいことではありません。
金継ぎは日本文化が生んだ美しき修理法
さて、この日本の美学・文化をそのまま伝統美として受け継いでいるのが、陶器などに見られる金継ぎです。
金継ぎというのは、陶器などにひび割れした箇所を、漆や小麦を練り合わせた接着剤でつなぎとめ、金粉などをまぶして美しく修理する技法の一つです。
ただ修理するとしても、破損した陶器などに、つなぎ目の跡なく、まるでひび割れがなかったかのごとく修理することは難しいです。
ひび割れの状況にもよりますが、どうしても若干跡が残ってしまうことだってあります。
だったら、そのひび割れの跡を生かして、より美的な陶器としてよみがえらせてしまおう
というのが、金継ぎなのです。
金継ぎのやり方
金継ぎのやり方には、いくつかステップがあり、漆と小麦などでできた接着剤を塗り、接合することから修理が始まります。
そして、金粉をまぶして紋様として装飾していくというところまでは、先程お話したとおりです。
この間には、接合面の凸凹をなくすために、ヤスリで接合面を削ったり、金粉の発色を良くするために弁柄漆を接合面に塗る作業などもあります。
このような細かい作業を追いながら、あの独特の紋様が生まれ、日本の伝統として評価されているわけ。
ただ接着剤でくっつけ、ひび割れたところが目立ってしまったのでは、その陶器の価値も大きく下がってしまいます。
しかし、あえてひび割れた部分を鮮やかに装飾することで、より価値を高め、雅な世界観を創出していく…。
これこそが金継ぎなのです。
金継は陶器以外にも使える修理技術
本記事では分かりやすく陶器を例に、金継ぎを紹介していますが、陶器以外にももちろん、この技術は使えます。
例えば、ガラス製の器・グラス、木製のボウル、プラスチックのコップなど、適応範囲が広く、いろんな器が修理できます。
もちろん何でも修理できるわけではありませんが、一度壊れたものが修理できる可能性があるのなら、試してみるべきです。
ぜひ、みなさんも金継ぎの世界を感じてみてください。
金継ぎに詰まった日本の美的考え方
さて、先程も少し触れた部分ではありますが、金継ぎとはまさに、物を大切にする日本だからこそ生まれた雅な伝統技術です。
そして、この金継ぎから、日本の美的考え方・哲学も伺えます。
その美的考え・哲学とは、まさに
物を大切にしていく
という教えそのものではないでしょうか。
物を大切にするという日本独特の文化とは?
日本では、太古の時代から、
物には魂が宿っている
なんて話が言い伝えのように語り継がれています。
もちろん、迷信と言われれば、それまでです。
そして、物を大切にするためだけに金継ぎが誕生したわけではありません。
そもそも足利義政の時代に、青磁の器に入ったひび割れを直させたことから、この金継ぎは誕生したと言われています。
当時、義政は、お気に入りの青磁の器にひび割れが入ったことにショックを受けたそうです。
そして、
「なんとか修理して再び使いたい…」
と思うようになり、中国の生産地に送って修理させたのです。
しかし、それは満足の行く仕上がりではありませんでした。
そこで、日本国内で、改めて修理させたところ、ひび割れた部分に金の装飾が施され、それが義政のお気に入りとなったんだとか…。
このことから物を大切にする日本の文化の一つとして、金継ぎは伝統工芸として受け継がれていったと言われています。
あくまで愛用した陶器だったから、それを失うのが嫌で、金継ぎが生まれたと言われればそれまでの話です。
しかし、日本人の雅な世界の中で、物を大切にする文化がなければ、金継ぎは生まれなかったことでしょう。
それは日本以外で、金継ぎなんて技術に全く無関心だったことでも伺えます。
まさに金継ぎは、日本だからこそ生まれた美徳センスや雅な文化・考え方・哲学の集合体となる伝統工芸なのです。
金継ぎに対する海外の反応は?
一見、ただのひび割れに見えながら、それさえも美しく雅を感じさせる日本の伝統文化の一つ金継ぎ。
海外での反応を調べてみると、この金継ぎに衝撃を受けて、絶賛している人が実に多いことが分かります。
中には、単純にその美しさに惚れて、レッスンを受けたいと思うだけに留まらず、日本の壊れたものさえも美しく魅せる、美徳センスに感銘を受ける人も…。
確かに、日本は昔からもったいない精神を心に宿し、どんなものでさえも無駄にしないように大切に物を使う文化があります。
金継ぎによって美しく物が修理されていく文化
金継ぎも、その延長線上と考えることもできますが、ただ修理して大切に使うだけでなく、そこに美的センスを埋め込んだのが金継ぎという雅の世界…。
それは、海外ではあまり見られない日本独自の思考・文化であるために、多くの人が感銘を受けたのでしょう。
こういう哲学が今も引き継がれてるなんて素敵……。
キンツギという文化を知ることが出来て良かった……。(クロアチア)
『見た目が最も重要』とする欧米人の考え方とは大違いだな。
キンツギは弱さをさらけ出し、それを誇る事で、さらに強い人間になれるんだという事を教えてくれる。(イギリス)
まぁ、いくら称賛されていると言っても、海外のすべての人が、称賛の声をあげているわけではありません。
金継ぎよりも優先すべき事があると批判もあるが…
「日本にはわびさびの文化があるのだから、金継ぎよりもわびさびを押し出したほうが良いのでは?」
「日本には、他にもたくさんの文化があり、金継ぎはその一つに過ぎない…」
など、金継ぎが取り上げられることに、不満の声を挙げる人もいるみたいです。
とはいえ、それは、単に他にも素晴らしい文化があるということを言っているに過ぎません。
金継ぎそのものが、ブサイクだとか変だとか、あれこれ批判している人は、ほぼ皆無に等しいといっても過言ではない反応が見られています。
海外では少数派なもったいない精神
海外では、もったいない精神よりも無駄を費やしたとしても、縛りを設けず余裕を持ちたい
『自分ファーストの世界』
が文化とされているそうです。
もちろん、人の価値観は人それぞれなのですが、何でももったいないと考えるのは日本独特の文化で、
陶器がひび割れ壊れたら捨てるしかない…
というのは海外の文化という話もあります。
人は、ないものねだりをする気質も持っているそうです。
まさに海外にない日本の美学・哲学が、金継ぎに詰まっているからこそ、海外で称賛されるのでしょう。
今後も、この金継ぎを世界に広め、日本の雅が、より世界に発信され続けていくことを期待したいですね。
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まとめ
陶器のひび割れや欠けなどの損傷を修理しながら金粉・銀粉をまぶして装飾を施し、より魅力的に仕上げる、日本伝統の修理法の一つである金継ぎ。
物を大切にしなさい
という教えを守り続けてきた日本人の文化に、金・銀をまぶした美しい装飾がコラボし、日本ならではの芸術作品として海外の反応も非常に高いです。
国内外問わず、さまざまなワークショップなどで、金継ぎが受け継がれ、ますます日本の文化として広がりを見せています。
このように素晴らしい文化として広まっているだけに、金継ぎを通じて、物を大切にする考えが、より多くの人に普及することを願うばかりですね。
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